あったか〜いのお茶を買った


私があったか〜いのお茶を買ったのは、今日が人生で2回目。


真冬のディズニーランドで雪が降った日以来だ。

あの時は高校生で、上はダッフル着込んでるのに下はバカみたくスカート折ってた。みんなで震えながら200円もする小ちゃい紅茶花伝を交代で抱きしめたの覚えてる。


今日は体調が悪い。

本能でわかる、今日の私は身体を冷やしてはいけない。

恥ずかしい、他人に置き換えると全くそうは思わないのに、自分の体調不良を恥ずかしいと、おもう。

そういう気持ちはあんまりいらないな、と思い直してツイートする。Twitterは自己暗示のツール。


ああでもやっぱり「あったか〜い」を買うのは恥ずかしい。なんて考えながらも、ちゃっかり1番すきなほうじ茶を選んで、目にも留まらぬ速さでチョコレートをとってきてお会計。チョコとほうじ茶で薬を口に押し込む。駅のホームで薬飲むなんて。そういうのはダサいよっていう青い気持ちと、あらまあすっかり社会の歯車になっちゃってっていう自傷っぽい快感と一緒くたにして飲み込んだ。


電車の乗り換えで人とぶつかってお茶を落とす。「あったか〜い」の文字が転がる。去ってゆくぶつかり犯の背中を睨みながら、私の人生にはあったか〜いのお茶も薬も要らない、と思う。

コンビニに寄ったせいでギリギリの電車だったから座れない。しかも本を忘れたようだ。これはショック。友達のブログを読み返す。


隣のおじさんが繰り返しズビズビ鼻をすする音に我慢ができなくなってくる。

揺れる度に体が触れるのも不愉快だ、とふと左を一瞥すると彼は手すりにつかまっていない。こういう人もいるんだよな。私のともだちがこういう人だったらどうしよう、指摘して変えられるのだろうか?

曲を進めてイヤホンの音を上げる。

ダメだ、iPhone付属のイヤホンじゃなにもキャンセリングできないんだった。

右隣の人にきっと迷惑だなと思って、音量を元に戻す。

友達のブログに集中する。

気に入ったフレーズを頭の中で繰り返す。

友達の顔を思い浮かべて、言っているところを想像する・・・

左から聞こえるズビズビが気になる、気になるなと思っていたら、あろうことか、視界の端で鼻をほじって指についたものを床に捨てている様子を観測してしまう。

大声をあげたくなる、が耐える、ぎゅうぎゅうの電車だけれど、何とか少しの距離をとる。

地下鉄なのに差し込む光で、次は人がたくさんおりる駅と気付く。

チャンス。

目の前の人が降りる、左の人に露骨に譲る。すると座ってくれた。でかした。

初めて正面からおじさんを見てみる。

ワックスで髪を固めていて、肌が綺麗、思っていたより若いかも。お兄さん?

ワックスで髪を固めていると言うことはみられかたを気にしていると言うこと。

どうしてこんな風に電車に乗るんだろうと考える。考えても分からなかったし、降りる駅が同じだった。

二駅だけでも座るタイプか

混んだ電車で変に座ることを遠慮する奴よりもすきだ。

お兄さんのすきなところを1つだけ見つけられたからよかった。


考えていたら薬が効いて体調がよくなっている。嬉しいな、袖を捲って、そのままの動きで腕の時計に目をやる。

時間がギリギリだ!走るぞ!

走れるようになってよかった、走るのは気持ちがいい。やっぱりお薬は、要るかも。



昼休みが終わってしばらくして、薬が切れているのを感じる。8時半ごろに飲んで、今は13時すぎ。4時間半。つまり今飲めばおおよそ終業で切れるとみた。考えながら飲み込む。

少しすると、頭の後ろの方に押さえ付けられるような、沈み込むような、鈍い感覚を覚える。

単純に不愉快と分類してもいいようなものだが、なによりも、きもちがいいなと思う。


体調不良の当事者になれる喜びがあって、人間用の薬をしっかり受容する器官が自分の中にあることに感動してしまう。

朝はたくさんチョコレートがほしくなる。

糖分がないと脳が動かないなんて小難しいことは後。生きているから朝にチョコレートが欲しくなる。そういうことだと思う。どんなこともつながりが分かると嬉しいし、自分で発見したことは全部尊い

誰がなんと言おうと、私が、朝はたくさんチョコレートが欲しくなることの第一発見者なのだ。


今日はパンを買って帰ったから、明日の午前中は机を金の包み紙だらけにしなくて済む。